喪失

 あるべき処にあるべきものがない
見慣れた風景の中の
失われた空間。
どうして人はそこにとても不安な気持ちを抱くのだろうか。


手に入れた何かを失う事
それを強く恐れる風潮、性質が
人にはあるだろう。
多くとも少なくとも必ずに
本能にまで刻まれたその記憶が。


 生きるために最低限度必要となるもの
それを得られない事は即死を意味する時代
そこでの失うの意味は
今僕等が考える以上の意味があったに違いない。
そうして連綿と続いてきた歴史が
今僕等の中でも生き続け
気持ちとして表れているに違いない。


人は喪失を恐れ、
もし失われたときは
埋める事を求め続けるのだろう。
永久に。