安らかに

 隔週火曜日。
いつもの様にイブニングを手にし読み始める。
あらかた読み終えた辺りで一つの漫画の一つのセリフに手が止まる。
須賀原洋行著、実在ゲキウマ地酒日記
そこに書かれた乳ガンという言葉に。


 最初はそんなことがあったが
持ち前の強運で回復で快気祝い酒だ!
という話になるのかと思っていた。
しかし話はどんどんと深刻になっていく。


それと共にどこかで
「なんちゃって」や「ウソでした」
という様な言葉が出てくるのでは無いかと思い読み続けた
最後のコマを見るまでは。
しかし遂にそれは現れず幕を閉じた。


 いや、・・・
作品にウソが無かったと書いたが
一つだけウソはあった。
この1年なりの期間、よしえサンがまだいるというウソが。
僕等はそれに騙され続けた。
そして今日、そのウソがばれた。


 ひどく悲しい。
それはウソがばれたことが悲しいのでは無く
ウソであると知れたことが悲しく辛い。
もっとその嘘の世界にいたかった。
ただ、それはあまりに酷とも言えようか。
皆にウソを現実と思わせてきた
須賀原氏の思いを考えると。


 よしえサンという人物は氏の漫画の明るさの象徴であった。
キャラクターが作品に華を与えていた。
僕等読者はそれを愛していた。
そして唐突に失った。悲しみが残った。


なんら面識は無い。
氏の漫画の登場人物とその読者の関係にすぎない。
しかし気持ちは、古くからの大切な友人を
失ったかの如くに思えてならない。


このとても大きな喪失感。
現実と思えない、思いたくない感覚。
関係者の心中を察するにあまりある。


 ありがとう。
そして安らかにお休みください。
今はその言葉を記すで精一杯