言葉の力

 それは、遠距離関係の男女に起きる
よくある出来事の一つ。


男性は地元を出て
一人暮らしをしている。
今の仕事を辞めるつもりは無く、
結婚後の拠点は
今自分の住んでいるところにしたいと思っている。


女性は彼の地元の人。
幼き頃よりその地に住み暮らしている。
そんな二人の関係。


 事は彼女よりもたらされた。
曰く、見知らぬ地、
知っている人が誰もいない場所へ行くのが
不安だと。


彼は言葉を返した。
しかし、結果として二人は
元の他人へと戻る事になった。


彼はどんな言葉を使えば正解だったのだろうか。
いいや、彼の使った言葉は
正解であっただろう。


 言葉はその背景により
力を増す事もあるし、
失う事もある。
誰が、どんな状況で使うのかによって。


例えば「俺に任せておけ」
その一言を皆から一目置かれている人が使うのと
見るからにいい加減そうな人が使うのと
どちらに力があるだろうか、
それは明白だ。


つまり、彼は
言葉の背景で彼女を
納得させる事ができなかった
そういうことなのであろう。


 言葉が心に響くために
持たなければならないものは
なんであろうか。
彼は今、それを考えている。