待ち人

 駅前で1頭の犬が座っていた。
その隣ではどこぞの店員が
キャバクラの客引きをしていた。
前者は楽しそうだった。
後者は非常につまらなそうだった。


2つの状況は似ていて、
いずれも何かを待っている。
前者は飼い主を
後者は客を。
そう状況は似ている、
しかしその表面に現れる感情は
非常に異なっている。


 対象が現れるであろうという
確証があるからこその待ちの楽しみ。
そして、その対象が
自分に取って嬉しいモノであるからこその
待ちの楽しみ。


前者にはそれがあって
後者にはそれが無い。
ゆえに状況は似ていても
その現れる表情に
差異が生まれるのであろう。


 逆に言えば
待つときの何気ない部分に
非常に内面が現れるとも言える。
待つ人が、仮に嬉しくなさそうであれば
あなたは会いたいと思いますか?