店と心

 念願の店へと初めて入った。
パティシエ イナムラ ショウゾウに。


 鶯谷にあるその店はいつも行列が出来ており
特に花見のシーズンなどは凄い混みようとなっている。
一度は行ってみたいと思っていたが
その行列に諦めていた。


しかし今日、とある用事で夕暮れ過ぎに
あの辺を通ったときにふと思った。
今日ならば、と。
これが大正解。
行列も無くスムーズに店内に入る事が出来た。


 洋菓子店の持つわくわく感
ショーケースに並ぶ数々に
思わず見とれるあの高揚感。
まさにそれがあの店の中にはあった。
これは、人気があるのも当然と言えよう。


そして一流店の持つ従業員の質の高さ。
これにも惚れるモノがある。
例えどんなに美味しいケーキでも
売る店員が駄目であれば、店から足が遠のくであろう。
しかし、そんなことも無い。
一人一人がなすべき事をしっかりとなしている。
そんな店の姿があった。


買い物後、自転車で来ていた僕は
店外で買ったケーキを背中のリュックに詰め込もうとしていた。
その時、「袋はいりますか?」と声をかけられた。
店内だけでなく、店外にまで目を配るという事
そこに驚きと嬉しさを覚えた。


そうしろと言われているから?
ううん、決してそれだけではないと思う。
「しろ」と言われてではなく
その行為に何の意味があるかを教えられ
一人一人がそれを身につけているからこそ
できるのだと思う。


 いい店だ。
また行ってみたい。
僕は1日でファンになってしまったらしい。