やってはいけない富士登山4

★2-2.はじまり


「寒いな。」
「霧もすごいね。」


 約1時間、須走口に到着
標高約2,000メートル。
この時点でかなり寒い。
慌ててポロシャツを取り出し、着込む。


今までいた場所とはあきらかに異なる場所。
いよいよ来たのだなと実感する。


 登山口。
山小屋兼土産物屋が2,3軒立ち並ぶ。
もう少し賑やかな場所を想像していたので
ちょっと意外。



 お店からは
「休んでいかない?」
「杖買わない?」
など色々声がかかる。


 そのご厚意はありがたいのだが、
何せぎりぎりラインの貧乏学生。
一杯の茶すら惜しい身。
丁重にお断りし、近くのベンチで最終の作戦会議。
明るいうちに地図を確認し、
チェック。


「ここで登山道と下山道が交わるから
間違えない様にしないとね。」
「了解。」
「7合目辺りまで行ったら夜食にして。」



不安や悲壮感などない。
どうせ看板や立て札があり、
それに従えばいいんだろう。
そんな風に考えていた僕ら。


どれだけ甘い考えだったのか
後で骨身にしみるほど味わうのだが。




 しばらくして「じゃっ、行きますか。」
どちらとなく声をかける。
時刻は18時を回っていたかと思う。


 御来光を拝むためには翌朝4時には頂上にいたい。
つまり、約10時間で2000メートル弱を登る計算だ。
「「余裕だな。」」
笑いあいつつ進む。


 いよいよ始まる。
苦行の登山記が。