やってはいけない富士登山10

★3-4.決断


『まだ、こんなもんしか来てないのかよ・・・。』
さすがにその数字は重かった。
この6,7時間で1,000メートルを登った。
しかし、まだ【7】合目なのだと。
後3ステップも残っている。
自業自得な行動が原因とはいえ
憔悴しきった僕らにとどめ指すには充分な状況だった。


 残りは約800メートル。
『どうしよう?』
平地ならわけない距離だ、
直線であれば、10数分といったところか。
しかし今回は”登る”のである。
間に合うだろうか。


 この先は正規の登山道。整備された道。
スッポンのごとく張られたロープに食らいつき
進んでいけばいい、いくつもりだ。
さらに、8合目付近からは吉田口とも合流する。
進みやすくなっていると思われる。


 だが、時間が足りない。
残りの1.5時間では到底無理だろう。
『御来光、諦めるしかないかなあ。』
そう思った時。
「ここでも御来光拝めるんだって。」
『何?』


 新7合目と書かれた看板の下、
確かにここでも拝めるとある。
『ここでいいか。』


 残り時間でアタックし、
”登っている途中で日の出となり、
御来光が拝めない。”
これは一番避けねばならない事態だ。

そう僕らにとっては
1.御来光を拝む
2.頂上へ達する
の優先順位なのだから。


「ここで御来光を拝むことにしよう。」
「そうだね。」
Aも同意する。
こうして僕らは新7合目で休息しつつ
朝日を待つ事にした。


 ちなみに須走口で7合目以上なら
基本的にどこからでも御来光が拝める
そんな事を知ったのは下山後の事である。