やってはいけない富士登山11

★4-1.御来光


 強い風が吹いていた。
暗闇の中に僕ら2人だけ。
互いに声もなく、ただひたすらに訪れる時を待つ。


 どれくらいの時間を待っただろうか。
正面に一筋の光が差し始める。
『おお、始まった。』


 眼前に広がる漆黒の闇は
瞬く間に明るさを増していく。
何も無いと思われた場所に
暖かみのあるオレンジ色に染まった雲の絨毯が現れる。
幻想的、絵本などで見た”天国の風景”とでも言おうか。


「綺麗だなあ。」
「凄いね。」
自分のボキャブラリーの無さに悲しくなるも
この風景は付け焼き刃的な言葉では
到底表現できない。
20数年生きてきた中で
1,2を争うほどの美しさだった。


 TVや雑誌などで見たからいいやという人もいるだろう
しかし、もしあなたが富士山に登る機会があれば
その意思があるならば
是非に見て欲しい、この風景を。
静かにゆったり落ち着いた気持ちで。
一生の宝になる。
そう信じている。