やっては生けない富士登山12

★4-2.再始動


 ショーは終わった。
美しい風景を作り上げた雲は消え去り
眼下には岩肌がくっきりと見えている。


「さて、どうする?」
最低限の目標は達成した。
この後の行動を決めなければならない。
選択肢は2つ。
このまま登るか、ここで下るかだ。


 現時刻は午前5時半過ぎ。
このまま下山すれば昼頃には家に着けるだろう。
そうすればゆっくりと布団で眠る事が出来る。
そう、まずは疲れた体を休めるべきだ。
頂上へはまたの機会にすればいい。


 しかし、その”また”ってのはいつの事だ?
ものぐさな僕が次に来ようと思うのはいつだ?
近所のスーパーへまた行くってレベルじゃないのだ。
ここで登っておかなくては下手するともう二度ともあり得るのではないか。


 どうやらAも同じ考えの様だ。
なーに、今度は明るい中で
整備された道をただ行くだけだ。
夜の様に迷う事も無い。
あんな苦労する事もないはず。
さらに先程からの休憩で体力も大分回復しているとくれば
楽勝さ!


「ちゃっちゃとすませてきますか。」
そうのんきに話し合い、
再び歩み始める僕ら。


そう、あっという間のはずだった。