やってはいけない富士登山14

★4-4.到着


 最後は人一人通るが精一杯なくらいの狭さだった。
後続の邪魔にならぬ様、休むことなく必死に登る僕ら。
おかげで頂上に到着した時は
『やった!』ではなく『やっと・・・』であったが。


 何にせよ、僕らはようやくたどり着いたのだ
日本一高い場所に。
そこから見る風景は格別であり
やはりここから御来光を拝みたかったという気分にさせられた。
最もそれも一瞬の事で
ベンチに腰掛けた途端ぐったりとしてたのだが。


 特にAは完全熟睡。
気持ちよさそうに寝息を立てている。
強い日差し故、顔にタオルを掛けてあげていたが
・ベンチに横たわり微動だにしない
・顔に白いタオルを掛けた人
どう見ても・・・あれとしか思えない状態。
道理で人がよらないはずだ。


 一方で僕は、人前ではあまり眠れない事と
僕まで寝てしまっては荷物などが危ないかと気になり
耐え続ける事に。
Aが起きるまでの約1時間、きつかった。


 頂上では一つやりたい事があった。
富士山頂を約1時間程度かけて回る”お鉢巡り”。


 様々な見所がある様で
ガイドブックを読んでは楽しみにしていたのだが
僕らの体力と時間はその様な事を許してくれるはずもなかった。
これも泣く泣く断念。


 今回の登山は本当にそんな事ばかりだった。
しみじみと思い、嘆く。
自業自得とはいえ。


 時刻は11時過ぎ。
登った以上は下らなければならない。
僕らは帰路につく。


「帰りさあ、須走口だけはやめようね。」
どちらと無くつぶやく。