やってはいけない富士登山15

★5-1.帰路そして再会


 僕らは”富士宮口”を目指した。
そう、初心者にもお勧めとされる
一般的な登山口へ。


 ”須走口”が悪いわけではない。
いや、むしろその性質上、下りに非常に適した道なのだ。
それはわかっている。
わかってはいるが、あれだけ色々あると
やはり避けたくなるというのが人情。
『仕方ないよね。』
2人の思いは一緒だった。


 されど・・・。
「須走口って書いてあるね、アレ。」
「そだね。」
運命と言うべきかなんと言うべきか
やはり須走口へ舞い戻るのであった。


 【ぞっとした。】
淡々と下る事しばらく、懐かしの新七合目に達する。
そして、陽光の下さらけ出される、あの苦闘の道。
よく無事だったなと。


 なだらかではあるが崖と呼ぶべきか、
明らかに”危険”な場所。
続く斜面、荒れた大地。
落石で怪我、下手すれば死すらありえたのではないだろうか。
『こんなに危険な場所だったとは。』
幸運を神に祈る僕ら。
あんな場所、決して登ってはいけない。


 堅く心に戒めつつ、下りを急ぐ僕ら。
なぜか?
ここまでに数多くのミスをしてきた僕らだが
また一つ困った話があった。
そうそれは・・・
”最終バスが何時かわからない。”であった。