建物

 また一つ、新しいビルが出来ていた。
この街で働くようになって
何個目であろうか、指折り数えようとしたが
思い出せない。
僕の覚えが悪いのか、
あまり変化の無いようで意外と変わっている街並みが早いのか
さてはて。


 1Fにはオシャレな料理店。
お昼には早速長蛇の列。
味もさることながら、
新しい店で食事したという事を
自慢したいのだろうなあと言う姿もちらほら。
この後あちこちのオフィスにて
OLさんに対し、自慢げに評価を語るお父さん
なんて姿が見られるかと思うと
少し面白い。


 新築のビルというものは
背筋を伸ばした凛々しさ、美しさを持ち
見ていて実にいいモノだ。
赤の他人である僕がそう思うのだから
ビルの持ち主にしてみれば尚のことであろう。
末永くあれと願うであろう。


 ところでビル、建物の寿命というのは
どれくらいなのだろうか
会計上の寿命の様な物はあるのだろうが
あくまで建物としての寿命。


建築素材の問題や、土地問題など
色々あるにせよ
奈良時代のお寺が今に残るの様な話はありえず、
ましてや100年の単位で持つとも思えない。
例えば想像出来るだろうか、
22世紀にも残る六本木ヒルズを。


 そう考えてみると、21世紀の今
様々造られている建物のどれほどが未来に残るのだろうか。
「これが21世紀初頭に建てられた〜」
100年後のはとバス
そんなアナウンスが流れるものがあるのか
一つぐらいはあって欲しいなと思う。
今を生きる者としての勝手なお願い。