見えなくて

今週のお題


 大切なモノは無くして初めて分かる。
例えば恋も、
なんてネタは僕のキャラじゃないので
やめておこう。
一度は書いてみたいけど(笑)。


 無くして困る経験
パッとまず思いつくのは
高校3年の冬、
上京してとある大学入学試験を受けた
あの日のこと。


下見もすまし、明日は頑張ろうと思いつつ
宿泊先の街でちょっと古本屋に寄ったのが失敗の始まり。
瞬きと共に落ちていく、右目のコンタクト。
本の中へ消え去った。
『しまった!』その思いは既に遅く。


どうしてだったのかは
さっぱり思い出せないが
予備は当然ながらメガネを持って行かなかった。
おかげで、まったくと言っていいほど見えない世界に
大苦戦する羽目に。


 まずは大学まで行くのに一苦労
運賃がわからない。
券売機の上にある、
あの大きな料金表が見えないのだから
これは人に聞くことでなんとかクリア。


 そして車中では
アナウンスに真剣集中。
乗り過ごしたら一大事。
もう帰ってくる自信などありはしない
前日の下見?
辺りが見えないことには始まらない。


 更に難関は続き、試験会場割りの確認。
受験番号によって教室が異なる。
眼を細め、じっと探す。
さぞ人相悪かったことだろう。


 やっと見つけた教室に入ると
席は最後尾。
とはいえ試験中ならば困らないだろう
なんて思っていたが、そうは問屋が卸さない。
「えー、試験問題に誤りがありました。
黒板に書いておくので確認ください。」
・・・無理です。


とまあ、こんな始末。
ある意味、良く無事で帰ってこれたなあと言う
一日を体験。
以来、コンタクトとメガネのセットを切り離さなくなったのは
言うまでもなく。


ちなみにこの受験、なぜか無事合格し
そして4年間通うことになったりする。
ある意味で縁って不思議だなあというお話。