猫の思い出

 昔飼っていた猫を一言で表すのなら
孤高の人、もとい、孤高の猫。
飼い主にべたべた甘える訳でもなく
他のネコと寄り添う訳でもなく
ひっそりとその生を閉じた。


なぜにそこまで他を寄せ付けなかったのか。
一つに彼女が拾い猫ということがあると思う。
生後間もない頃に捨てられたが
なんとか生を得た。


そんな自分の居場所に
他の猫が進入するという事は
生を脅かす事柄
故にあれだけ嫌ったのだろう。


なにせ、ひきつけを起こすかのごとき怒りようだったので、
遅れて飼うことになった別の子を近づけられず
ずいぶんと難儀したものだった。


そして、人に甘えない。
こちらはまあべたべたしないという程度であり
猫らしいと言えば猫らしい態度。
一番甘えてくるのは
好物の焼き海苔が入った缶を開ける音がしたときか。


つかず離れずの微妙な距離。
でも人がいないと寂しがる。
そんな子。
色々気むずかしい部分もあったが
我々は可愛がった。


どこが可愛いの?と聞かれても
可愛いから可愛いとしか言い様がないのだが。
結構、美猫だったし。
・・・なんかそう書くと
たちの悪い異性に引っかかった人みたいだな(笑)。


 最後はねこの名の通り
ほとんどを寝て過ごす生活。
それもいよいよとなった夏のある日。
ふらっといなくなった。
猫の本能に従うが如く。


そのいなくなった日の翌日、
僕は最後となるかも知れない彼女の姿を見に
実家に変える予定だった。
弱い姿を見せたくなかったのか
たまたまなのか。